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2006/10/06

「アディダスVSプーマ」

「アディダスVSプーマ もうひとつの代理戦争」は、2大スポーツシューズメーカーの歴史とともに、スポーツの商業化の歴史を知ることができる、たいへん興味深い本。

「アディダスとプーマの創業者は兄弟だった」ということは、サッカー好きの人間であればほとんどが知っている「トリビア」ではないだろうか。しかし、現在のアディダスとプーマは、アドルフとルドルフの兄弟がそれぞれ創業したときの姿のままではない。それぞれがいったんは破綻し買収されたため、今ではダスラー家のものではなくなっている。これは、この本を読んで初めて知ったことだ。

ワールドカップがこれほどまでに大規模で商業的な大会になった陰には、アディダスの2代目だったホルスト・ダスラーの活躍(暗躍?)があったことは知っていた。だが、彼は必ずしも創業者アドルフ・ダスラーといい関係を築いていたわけではない(ホルストは父に勘当され、生涯関係は修復されなかった)。これも、初めて知ったこと。

選手がシューズメーカーと高額のスポンサー契約をすることは今ではあたりまえのことだが、以前はもっとあざといことが行なわれていた。メーカー側がオリンピックで靴を無料配布したり、トイレやロッカーでこっそり多額の現金を渡したりするかと思えば、選手たちもより有利な条件を引き出すために複数のメーカーとの間で駆け引きをするようになる。金にまみれたスポーツ界という構造は、半世紀も前からすでに始まっていたのだ。現在のスポーツビジネスが完成していく過程は、実にスリリングでおもしろい。

あとがきによれば、この本はちょっとかわった成り立ちをしているようだ。

フランスに住むオランダ人女性がドイツのスポーツ用品会社2社を調べて英語の原稿を書くというのでは、日本の出版社向けの企画には見えなかったろう(P.429)。

なるほど、それでアディダス・ジャパンと中村俊輔のエピソードがプロローグで出てくるわけか。さらに第26章の「ブルー・フィーバー」(アディダス・ジャパンが02年W杯でユニフォームを売って大儲けをする話)も、全体の流れからするといかにもとってつけたような印象。たぶん、このあたりが日本向けに付け加えた部分なのだろう。しかし、その他の部分での日本へついての言及は、電通とISL、デサントとアディダスなど、いろいろ勉強になることが多かった。

商業主義に毒されたW杯を批判する「盗まれたワールドカップ」などの本では、ホルスト・ダスラーは悪役として描かれてしまうのだが、この本では人々をひきつける人間的な魅力をもった人物として描かれている。そうでなければ、アディダスがあれほどの短期間のうちに世界的企業へと変貌できるわけがない。「罪」があったにせよ、「功」もあったことは明らかなのだ。

サッカー界、スポーツ界、スポーツマーケティングの世界をいろいろな側面から知りたい人にはうってつけの本。ビジネス書として読むのもおススメだ。惜しむらくは、ちょっと誤植が多いかな。「ランダムハウス講談社」の本としては残念。

この本を読んでから、わが東京のユニフォームを見れば「これだけ歴史のあるブランドのユニフォームも悪くないよね」な~んて思えてくるかもね!?(笑)

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