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2007/10/13

「男たちは北へ」

しばらく前に読んだ本なのだが、いい機会なのでご紹介。

男たちは北へ」は、自転車ハードボイルド小説だ。

主人公は、44歳の売れないグラフィックデザイナー、桐沢風太郎(しかもアル中)。親友との約束を果たすため、彼はひとり清瀬市の自宅から自転車で青森駅をめざす。だがその途中、とある落し物を拾ってしまったせいで、恐るべき陰謀に巻き込まれてしまう。青森へのツーリングは、命の危険を伴う大冒険へと様相を変えてしまうのだ。

1989年に発表された、風間一輝のデビュー作。以前から作品の存在も、著者が若くして亡くなったこと(99年没)も知っていたけれど、実際に読んだのは昨年。読むまでは「自転車小説」だとはまったく知らなかった。

東京から青森までは約千キロ強あるという。主人公はその距離を、大荷物を積んだサイクリング車(89年作品なので、変速システムが今と違う)で走破しようというのだ。ルートは主に国道4号線。峠を越え、雨に降られ、野宿をし、トンネルを突っ走り、アルコールの禁断症状に悩まされ、ついでに謎の男たちに命をつけ狙われながらも、彼は漕ぎつづける。

ちなみに著者は、同じルートと装備で「東京~青森」間を走破し、その経験をもとにこの小説を書いている。関東平野を越えて先へ進むことはかくも困難なのだ。ポタリングだけで一生を終えそうな私には、想像もつかない難事業である。

先日NHKで放送された「男 自転車ふたり旅」をうさんくさく感じてしまったのは、たぶんこの小説を読んでいたためだと思う。約1週間をかけて、観光もせずうまいものも食べず、必死で走り抜けた男の話を読んだ後では、5日で800キロをさわやかに走った若者たちの話にはどうも真実味が感じられないのだ(笑)。

この小説が出版されたころは、私自身もミステリ(ハードボイルド?)にハマっていたような記憶がある。ディック・フランシスの「競馬シリーズ」や、ロバート・B・パーカーの「スペンサー・シリーズ」を読みあさっていたころだ。この作品にも、当時人気だったハードボイルドっぽいセリフが随所に出てくる。今読むと、ちょっと気恥ずかしいけど、これもまた良し。

著者が50代の若さで亡くなってしまったことは、今さらながら惜しまれる。生きていればまだ60代。きっとさらに魅力的な作品を送り出してくれただろうに。今回、感想を書こうと検索していて、「風間一輝=桜井一」ということを初めて知った。桜井さんが表紙を担当した冒険小説もたくさん読んでいたよ……。今さらながら、何だか悲しいなあ。


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