« 小平詣を再開 | トップページ | キンモクセイ受難の年!? »

2007/10/05

「鉄塔武蔵野線」

本屋に行ったら、この文庫が平積みになっていた。

51zmapm62gl_aa240_これってずいぶん昔に出た本のはず……しかも、前より分厚くなっているような!?と手にとってあちこち見ると、どうやらこれが「完全版」とのこと。以前のものを読んでいないので何をもってして完全版というのかはわからなかったが、せっかくなので読んでみることにした(出版当初から気にはなっていたし、こういうオプションには弱いんだよな)。

これは、小学5年生の見晴少年が、2歳年下のアキラとともに鉄塔をたどっていく夏休みを描いた物語だ。

物心ついたときから鉄塔が大好きだった見晴は、近所にある鉄塔に「武蔵野線75-1」の札を見つける。近隣の鉄塔を見てまわった結果、はるか先には「武蔵野線1」の鉄塔があり、その先には「秘密の原子力発電所」があるに違いないと考えた彼は、夏休みの1日を使って鉄塔をたどる旅を始めたのだった。

「鉄塔小説」と銘打たれていたが、なるほどその通り。

ストーリーは「夏休みの少年たちの冒険譚」で、どこかノスタルジックな「スタンド・バイ・ミー」風にもみえる。だが実は作者は鉄塔のことだけが書きたくて、写真を載せたくて、鉄塔への思いを知ってもらいたくて、この小説を書いたのではないだろうか。それほどに「鉄塔大好き」という気持ちがあふれた本なのだ。

この「完全版」では、以前の新潮社版(単行本&文庫)では掲載しきれなかった、武蔵野線の鉄塔全81塔(以上)の写真が掲載されている。それも、1鉄塔につき写真は最低5枚、レイアウトも作者の意向に合わせたものだ。

私が鉄塔に抱いてきたイメージといえば、せいぜい「特撮映画に欠かせないアイテム」という程度のもの。逆に「電磁波が強そう~」とか「サイコンが狂うのでは?」などと、どちらかといえば否定的な見方しかしていなかったのだが、世の中にはこんなに鉄塔を愛する人がいるのかと知ってビックリした(笑)。

「男鉄塔」「女鉄塔」「婆ちゃん鉄塔」「結界」「蛹点」などの鉄塔を表現する独特な用語にも最初は面食らったが(鉄塔にも性別や年齢があるんです!)、写真を見ながら読んでいるうちに「なるほど」と納得してしまう。鉄塔なんてほとんど同じ形なのかと思っていたけれど、ひとつとして同じものがないほどに個性的だったんだね。

この本にはご丁寧に折り畳みの地図までついていて、武蔵野線の全鉄塔を地図で確認することもできる。それによれば、武蔵野線(JRとは関係ありません)は、埼玉県の日高市に始まって西東京市まで続いているということになる。とても、小学生の自転車では1日にまわることはできないだろう。そんなことを考えもせずに出発してしまうところが、小学生らしいのだけど。

武蔵野線のロケーションは、私が自転車でよく通る場所でもある。たぶん、落合川付近を走っていて目に入った鉄塔は武蔵野線のものだったんじゃないだろうか。見知った場所が小説に出てくるのは楽しいものだ。また、主人公たちが自転車で鉄塔をめぐるという意味では、微妙に自転車小説でもある。見晴君があざやかにパンク修理までできるのには感心した。たぶん私は彼ほどには手際よくできないだろうな。

エンディングに至って、読者は「そういえばこの小説は「日本ファンタジーノベル大賞」受賞作品だったんだ」と思い当たることになる。人によって、それが好みかどうかは分かれるような気がする。先日、CSで映画版が放送されたので、そのうち見てみよう(今はCLで忙しくて見るヒマがない~)。

この本を読んだせいで、急に鉄塔の存在が気になるようになってしまった。そうして自転車に乗ってみると、鉄塔というものは身近な存在だったということに気がつく。あんなにデカい物体なのに、今までずっと気にも留めなかった。これだけたくさん人が住んでいて電気を使っているのだから、そりゃ鉄塔も必要になるだろう。そういえば、小平グランドに行く途中にもあったなあ。

Rimg0040


というわけで、目についた鉄塔を撮ってみた。何線かも知らないし、番号も知らないけど。確かに被写体としてちょっと魅力的(特に夕景には映えますね)。自分で撮ってみて、改めて80数本の鉄塔すべてをあらゆるアングルから撮影することの大変さがちょっとわかったよ。やっぱり、愛だね。


|

« 小平詣を再開 | トップページ | キンモクセイ受難の年!? »

コメント

「サイコン狂う」に笑いました(爆)。そういえば鉄塔はうちの近く(と言っても
100m以上離れてますが)にもありますが、家の中でサイコンが150km/hで暴走す
ることがあったのはそのせいでしょうか。って、ここで訊いてどうするって話
ですが。

投稿: 小隊長 | 2007/10/05 12:38

完全版ですか~
以前の小説は持っていますが、また読みたくなってしまいます。
子供の頃の冒険心を思い出しますね。

ちなみに1号鉄塔の場所に行ったことがあります。
↓TBが飛ばないかもしれないのでリンク貼ってすみません。
http://xjmarin.seesaa.net/article/24365344.html

投稿: きーじぇい | 2007/10/05 20:12

私も送電線には何かとお世話になっています。と言っても、山の中で、かつ送電線の下に続く管理用の歩道を通らせてもらっております。

確かにあの本を読むまで、送電鉄塔の形に色々なバリエーションがあるなんて思いも及びませんでしたね。

投稿: 山猫の店主 | 2007/10/05 22:54

小隊長さん、コメントありがとうございます。

あー、ウチでもサイコン狂いますよー。特に、TVや扇風機のそばに置いてしまうと、一瞬で最高時速が100キロ近くになってしまいます。できるだけ電気製品のそばには置かないほうがいいみたいです~。

投稿: つぴぃ | 2007/10/06 01:57

きーじぇいさん、コメント&TBありがとうございます。

ブログはずいぶん前から拝見しているのに、鉄塔記事があったことはすっかり忘れていました……というか、当時は鉄塔には興味はなかったのでスルーしてしまったのかもしれません。

新潮社版も、単行本と文庫本ではラストが違うそうですね。今回のソフトバンク文庫版がどちらに準拠しているのかわからないのが悔しいところです。ぜひお読みになって確認してみてください。

投稿: つぴぃ | 2007/10/06 01:59

山猫の店主さま、コメントありがとうございます。

管理用の歩道というのがあるのですね。私は平地の鉄塔しか見たことがないのですが、そばまで行かれない鉄塔が多いことに驚きました。鉄塔をたどるポタリングというのは、意外とハードルが高いのかもしれません。

投稿: つぴぃ | 2007/10/06 02:02

お久しぶりです。

この本に興味はあったんですがいまだ読まずじまいです、今度読んでみよっと。

むか~し後輩と二人で電柱の写真を撮るバイトをしていましたその時電柱の地図なる物をはじめてみて電柱にも番地があることを知りました。東電とNTTの電柱は別だとか共有する物があるとか知らない世界なので面白かったですよ。

はたから見れば怪しい人、何度か通報されたりして。。。

ただ立ってるだけじゃないのねって思ったりして^^

投稿: 面白家族長男 | 2007/10/09 12:42

面白家族長男さん、コメントありがとうございます。

電柱にも地図があるんですか! でも、考えてみたら必要ですよねー。電柱写真を撮るバイトというのも初めて知りました。いろいろ教えてくださってありがとうございます。それにしても、電柱の数は鉄塔どころじゃないですよね。すごく大変そう……。

投稿: つぴぃ | 2007/10/09 19:36

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/91775/16665721

この記事へのトラックバック一覧です: 「鉄塔武蔵野線」:

« 小平詣を再開 | トップページ | キンモクセイ受難の年!? »